先週、苫小牧でランチを食べた。海鮮料理で有名なところで、グーグルマップでも多数の高い評価がついている店である。私には初めての店だった。1500円の、「特上生ちらし」を注文した。上の写真がそれである。
見た目は、全く美しくはない。
よく、日本料理は「目で食べさせる」と言われる。目で楽しむ、とも。
しかし、この海鮮丼の「見た目の悪さ」は特筆に値する。乱雑。不思議なことに、カニの蒲鉾が載っている。カニが高価なものであり、1500円の料理には使えないのなら(確かにその通りだと思うけれども)、最初から載せなければいいのにと思う。海鮮丼で、どうして「蒲鉾」なのか苦笑してしまった。
店は簡単なテーブルと椅子が並んでいるだけの殺伐としたものである。まるで工事現場の「飯場(はんば)」のような雰囲気。店内も厨房も、そして何よりもトイレなどが老朽化しているのは一目で判る。
それでも、作業員服や背広姿の男たちが大勢来ていて、海鮮丼や煮魚・焼魚定食、あるいは鍋焼きうどん(タチ・タラの白子・入り)などを注文していた。
ここは、地元で働く人々の「飯場」なのである。
レジ横に並べられている煮魚や、自分の海鮮丼の写真を何枚かiPhoneで撮っていたら、厨房からこの店の主人らしき50歳くらいの小太りの男がやってきて、突然私にこう言ったのだった、不機嫌そうな口調で。
「あんまり写真あちこちに上げないでくれな」
「人で不足でやってんだから大勢(客が)来たら対応できないんだよ」
そして踵を返して戻っていきながら、吐き捨てるように、
「やめてくれな」
と言ったのだった。
いや、その通りなのだろう。2人か3人いたおばちゃんたちは誰もが忙しそうに働いていた。それに加えて店主らしき男性一人だけで切り盛りしているのだろうから、忙しいことは見ていたなら理解できる。
そして幸いなことに、私はこの店の店名を出すつもりもないし、海鮮丼の写真一枚だけをブログにアップするに留めておく。しかも、店主にとって極めて朗報となることだろうが、私自身は二度とこの店に行かないので、店主を今後煩わせることもない。
翌週はRegalo da Jfarm というイタリアンレストランでランチをとった。
https://regalo-da-jfarm.com/ ランチ1650円 駐車場は充分に広い
残念ながら、フォカッチャが全く美味しくないのである。そしてパスタも凡庸の一語に尽きた。このパスタランチに1650円を払うのは、私には続けられないと思った。しかし、店は苫小牧の郊外にあり、内装もオシャレなので、これからもデートやお喋りの場所として流行っていくのだろうとは思えた。
もう二度とは来ないであろうイタリアレストランのカウンターで一人コーヒーを飲みながら(凡庸なパンナコッタを時々口に運びながら)、スマホで2日前の事故のニュースを見ていた。
大型トレーラーと衝突、RV車の夫婦が死亡…RV車がスリップ、対向車線にはみ出す様子がドラレコに 北海道長沼町 1/18(火) 14:45 HBC北海道放送
18日午前、北海道長沼町の国道で、大型トレーラーとRV車が衝突し、RV車に乗っていた夫婦が死亡しました。
18日午前11時まえ、長沼町西9線の国道274号線で、北広島市の方向へ走っていたトレーラーと、対向してきたRV車が衝突しました。この事故で、RV車は路外に飛び出し、運転していた札幌市白石区の▲▲さん84歳と、同乗していた▲▲さんの妻、▲▲77歳が死亡しました。死因は外傷性ショック死です。トレーラーを運転していた56歳の男性に、ケガはありません。警察によりますと、RV車がスリップ、横になりながら対向車線にはみ出し、トレーラーの正面部分にRV車の助手席側が衝突する様子が、トレーラーのドライブレコーダーに映っていました。現場は片側1車線の見通しの良い直線道路で、路面は凍結していました。
この事故のあった場所、国道274号線を私はもう200回か300回は走っているだろう。事故のあった場所は、10キロ以上続く直線道路が始まる場所であり、ランクル(だと思う)を運転していた84歳の男性は、車を過信して勢い良くアクセルを踏んだのではないだろうか。スリップして回転して、トレーラーと衝突した。ドライブレコーダーに画像が記録されているというから、ランクルのスピードも解析できるだろう。遺族には申し訳ないけれども、ぶつかったのがトレーラーで良かった。もし、これが、母親と3人の子供の乗った軽自動車とぶつかっていたなら、軽自動車は紙袋のように潰されて、母親と3人の子供が即死して老夫婦がかすり傷、ということになっていたことだろう。たとえ普通乗用車でも、あの大型のランクルが高速でぶつかってきたなら、普通乗用車の運転手は「殺されていた」可能性は充分にある。
トレーラーの運転手はいい迷惑だろうけれども、本当に、老人のランクルがトレーラーにぶつかって良かった。
車を運転していれば、いつ、この84歳のランクル老人と出会うかわからない。
つまり、いつ、無謀な運転をする男や女に、84歳か64歳か24歳かの男や女に「殺される」ことになるかわからない。つまり、イタリアンレストランで美味しい食事をしていても、それが「最後の食事」になるかわからないのである。苫小牧からの帰り道、国道36号線を暴走するランクルか正面衝突してくるかもしれない、こちらが真面目に車線を守って制限速度で走っていたとしても。つまり、いつでも、いつ死ぬかわからないのである‥‥。
そこまで考えた時、「最後の食事」がこのRegalo-da-Jfarmのものだとしたら悲しい、と思った。死ぬ前には、何か美味しいものを食べたいものだと思った。